きのこの基礎知識 ‥きのこの栄養学‥

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 きのこの薬効については、昔から漢方薬に用いられるなど、広く知られている。きのこのおいしさを愛でるだけでなく、その栄養学に迫り、健康維持や病気の治療に役立つと評判の実体を明らかにせよ、との編集部のお達しの声は、誰の目にも確実に生活習慣病予備軍に映る私に向かって、まっすぐに放たれた。 焼き松茸、熱々のきのこ鍋、フレッシュ・ポルチーニと、垂涎ものの話題が飛び交うなか、なんと優しい心遣いであろう。

 けれども、調べてみて驚いた。 きのこは実に優れた食物なのである。 秋の味覚として、香りや味ばかりがもてはやされているが、栄養面からみても効能からみても侮れない素晴らしい力が潜んでいるのだ。

「食べごたえがあって旨味のあるきのこは、超低カロリーのためダイエットの強い味方です。種類によって差はあるもののビタミンB群が多く、食物繊維が豊富。 なかでもB2は別名"美容ビタミン"と呼ばれる、脂質やタンパク質のエネルギー代謝に必要なビタミンで、これが足りないと太りやすくなったり、吹き出ものができたり肌がカサついたりする皮脂のアンバランスが起きます」 

というのは、医学博士、管理栄養士の本多京子先生。 ビタミンB2は、体を錆びさせ老化を早める活性酸素の消去にも効果があり、動脈硬化を防ぎ老化防止に役立つ。 世界中で最もよく食べられているきのこのマッシュルームには、このB2が多く含まれている。 さらに、きのこ中には糖質のエネルギー代謝を促すB1やB6、B12といった神経ビタミン"頭脳強化ビタミン三兄弟"が揃っている。特にB1は脳のガソリンであるブドウ糖を燃やす重要なビタミンなのだ。

きのこは抗ガン作用をはじめ生活習慣病の予防にも効果が

 ビタミンB群に次いで豊富なのが、食物繊維である。 きのこには水溶性と不溶性両方の食物繊維が含まれており、水溶性は血糖とコレステロール値を低下させ、不溶性は体内の有害物質の排除を促して便通をよくしてくれる。 旬の松茸は、この食物繊維の含有量が一番多いのだが、一度でいいから「食物繊維が足りないから今夜は松茸ね」などと言ってみたいものである。

「発がん抑制作用があると話題のβ-グルカンも、きのこに多く含まれている成分です。 ほかにも抗ウイルス性のあるリグニン、コレステロールを抑制するエリタデニン、紫外線に当たるとビタミンDになるエルゴステロールなど、数多くの有効成分があります。きのこは大量に摂る必要はないけれど、できれば毎日食べたいものですね」

 干し椎茸に限らず、生のきのこも料理する直前に30分くらい日光に当てておくと、きのこに含まれるエルゴステロールがビタミンDに変わり、その有効量も10倍に増える。たとえ天日干しの椎茸でも、1カ月くらい缶にしまっておくとビタミンDが減少するので、長く保存するなら1カ月に一回は日に当ててやるといいそうだ。

 ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあり、骨粗鬆症の予防に効果がある。 もっとも、椎茸を天日干しにしなくても自分が日光浴すれば同じ効果が得られるというから、好きなほうを日光浴させてビタミンDを摂取しよう。

 きのこを種類別にみてみると、日本で最もよく食べられているのは椎茸、次いでエノキ、ブナシメジ、舞茸の順。 おなじみの椎茸には、先に挙げたエリタデニンやビタミンD、β-グルカンが豊富で、研究によって著しい抗がん作用が確認されている。 安価でおいしい椎茸は、干し椎茸の場合は一日9g(約3枚)、生椎茸なら90gを毎日食べ続けると、免疫増強効果とともにコレステロール値が低下するというデータもあるそうだ。

 またここ数年、頻繁に見かけるようになったのが舞茸である。 風味、歯ごたえがよく、鍋に入れても天ぷらにしても、炊き込みご飯やパスタにしてもおいしい舞茸が注目を浴びたのは、今から5~6年前のこと。 お母さんたちのバイブル的昼のTV番組で、その抗がん作用について紹介されるやいなや、瞬く間に全国に舞茸の名前が広まった。

各種ビタミン、ミネラルを豊富にバランスよく含む舞茸は、生活習慣病、がん、エイズに効果がある。

「現在の年間消費量は約3万t。うちでは18年前からバイオ技術を利用して舞茸をつくってきましたが、当初から比べると倍以上に伸びています」(「雪国まいたけ」販売企画課・溝内健一郎さん)。

 栄養面をみてもβ-グルカンなどの多糖体、ビタミンB1、B2、エルゴステロール、食物繊維のほか、亜鉛や鉛、カリウム、鉄といった各種ミネラルが多く含まれており、ほかのきのこに比べて栄養バランスがいいのが特徴だ。舞茸にも椎茸に劣らぬ薬効があり、生体リズムを調節したり、血糖、血圧、コレステロールを低下させる働きや、免疫力を高めてがんの治療や予防、エイズ治療にも効果があるといわれている。

きのこ料理は"汁ごと食べる"が基本

 ところで、これらきのこの有効成分を損なわずにちゃんと摂取するためにはどんなことに気をつけたらいいのだろうか。せっかくの薬効も調理の仕方が悪ければ、大部分が失われてしまうことも少なくない。そのあたりをもう一度、本多先生に伺ってみると――。

「きのこに多く含まれるβ-グルカンなど、抗がん効果がある多糖体は水に溶けやすい性質があります。だから、きのこを食べるときは汁ごと食べるのが基本です。きのこ鍋をしたら最後までおじやで食べて、干し椎茸の戻し汁は料理に使うこと。うちではきのこをまとめ買いし、サッと洗って小房に分けて冷凍にしています。カチンカチンのまま料理してしまえば栄養素が逃げないし、凍らせることできのこの硬い細胞膜が破れて、かえって栄養素を吸収しやすくなるんですよ」

 そんな本多先生お薦めのメニューが、きのこのポタージュ。 つくり方は、まず玉ねぎとにんにくを少量のオリーブオイルで炒めてから好みのきのこ数種類を入れ、水と固形スープを加えてサッと煮立てる。それをミキサーにかけて仕上げに牛乳を加え、塩、胡椒で味を調えて出来上がり、といたって簡単だ。

「このポタージュは食物繊維が摂りにくいお年寄りや、きのこ嫌いの子供にも最適です。牛乳を入れることでカルシウムも摂れるし、料理する前にきのこをお日様に当てればビタミンDを摂ることもできる"骨太スープ"です」

 また、同じビタミンを含む食材ときのこを合わせることで、ビタミンを足し算して、さらなるパワーアップも。

 きのこは種類によってアミノ酸の組成が異なるため、いろんなきのこを合わせたほうが、こちらもアミノ酸の足し算で味がグンとよくなるそうだ。

 環境汚染が進んでも原始的な菌類であるきのこは育つ。宇宙船でも月でも育つきのこは、まさに21世紀の食物といえよう。おいしいだけでなく数々の薬効パワーを秘めたきのこに感謝!

*記事はdancyu 2000年11月号『美味しく食べて、もっと健康になろう 生活習慣病よサヨウナラ!「きのこ栄養学」最前線 』より、抜粋引用したものです。


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